Loading

携帯URL

フォトアルバム
Blog powered by TypePad

はじめにお読みください

2009年10月 1日 (木)

はじめに

このブログを管理する若杉です。

自己紹介とブログを立ち上げた経緯について説明をさせていただきます。

長年消化器外科医としてがん治療に携わってきました。

東京女子医科大学に所属し、胃がん、大腸がん、肝臓がん、乳がん等の手術治療と抗がん剤による治療が専門でした。


病院でのがん治療と平行してがんの発症や治療に結びつく遺伝子の働きを解明する研究にも従事していました。


がん細胞はとても不思議なものです。

元は正常な細胞だったものがなんらかの原因でがん細胞に変異するわけです。

そして、一旦発生するとほとんどの場合急速に増殖して大きい腫瘍になり、次の段階では転移という飛び火をして全身に広がって行きます。

転移したがん細胞はまたその場で増殖し臓器の働きを妨げます。

加えて、悪液質といって免疫不全の状態にして、元来体が持っているがん細胞と戦う能力である免疫力を奪ってしまいます。

臓器不全や悪液質が進行するとがんの増殖はさらに加速し死をもたらします。


がん細胞元は正常な細胞だったものですから、へたに攻撃すると正常細胞も損傷してしまいます。がん細胞と正常細胞のわずかな違いを見つけ、治療に結びつくポイントを特定し、攻めてゆくのががん治療研究の主眼です。


私が研究で最も興味を惹かれて没頭したのはテロメラーゼという物質でした。この物質はがんの発症や生命維持に深く関与し、有望ながん研究のターゲットと考えられていたのです。


生物の細胞にはそれぞれ寿命があって細胞死と再生を繰り返しています。新陳代謝のひとつとしてどんどん新しい細胞が生み出され古い細胞は消滅してゆくわけです。皮膚や腸粘膜のように常に傷付いていたり、白血球のように病原体や体内の異物と戦っている細胞は特に再生が頻繁です。


細胞は再生する際に元の細胞と同じコピーを作ってゆきます。おのおの生物の種によってコピーするための設計図は異なります。

この設計図が遺伝子と呼ばれます。

人間であること、性別、人種、身体的特徴、性格等はすべて遺伝子で決まってきます。


ひとつの固体の中でも臓器によって細胞は違います。遺伝子は同じでもその場に応じて適切な臓器を形成します。


安定して遺伝子のコピーを作るのには遺伝子の末端にあるテロメアという部分が重要です。これが無いと遺伝子は正確に複製されません。

このテロメアは回数券のように細胞の複製をするたびに使われて短くなってゆきます。そして、ある程度の回数になってテロメアが短くなると遺伝子はうまく複製されず細胞の再生も止まります。これが個々の細胞の寿命を規定します。


ここで不思議なことに、ある程度テロメアが短くなると場合によってテロメラーゼという物質が作用し始めテロメアをどんどん伸ばしその細胞を不死化することがあります。

実はこれががん細胞の発生のメカニズムのひとつです。


がん細胞の最大の特徴は寿命が無く無限に増殖することです。


ここで考えられるのはテロメラーゼを抑制すればテロメアの伸展は止まりがん細胞の増殖を阻止しうるということです。


わたしの研究はこのテロメラーゼを抑制する物質を探すことでした。残念ながら、基礎実験でさまざまな遺伝子での操作を試みましたががん細胞の増殖を抑えるものはできませんでした。

平行して世界中の研究者たちが同様の研究を続けましたがやはり芳しい成果は報告されませんでした。


2年以上の時間を研究に費やしていたところ、どうもテロメラーゼ以外にもがん細胞を不死化する物質がありそうだということがわかってきました。これは世界中のテロメラーゼ研究者に大きな失望を与えました。


テロメラーゼを阻害してもそれ以外にがん細胞は増殖するためのすべを持っていて、がんの増殖は抑えられないということなのですから。


医学研究の中でがん治療の研究には時間と費用が最も費やされています。しかし、最も目的の達成率が低いのもがん治療の研究です。


外科医として多くのがん患者さんの最後を看取ってきました。

外科医の強い思いはがん死を少しでも減らしたいということです。


クリニックを開業して外科医としてメスを持つことが無くなっても、なんらかの形でがん対策のお手伝いをしたいと思い続けてきました。


クリニックでご提供している人間ドックに肺がんを早期に診断すべく、胸部ヘリカルCTを追加しました。

また、楽に受けられる胃カメラをいち早く導入したのも診断精度の高い胃カメラを一人でも多くの方にお受けいただきたいと思ったからでした。

女性の乳がん、大腸がんの増加対策として、検診での便潜血検査、乳房検査の重要性を訴えています。


同時にがんの予防にも力を入れてきました。

胃がん予防には積極的にヘリコバクター・ピロリの除菌治療を行い、肺がん予防のための禁煙外来・指導・カウンセリングを続けてきました。大腸がんが食事、飲酒や運動不足から発症することから食事・運動療法にも力を入れています。


このブログでは人間ドックの話題を中心に、がんとメタボリック・シンドロームに関連する新しい医療情報をお伝えして行きたいと考えています。


インターネットをはじめとしてさまざまな医療情報が世の中にはあふれています。

中には解釈が難解で自分にどう関わるのかが実感できにくい情報も多く見られます。


健康が一番とはいっても健康について考えたり情報収集をする時間は限られているでしょう。

このブログを必要なときに使っていただければ幸いです。